茶草場農法

「茶草場農法」とは?

静岡の茶葉の収穫は年3~4回。4月下旬の新茶に始まり、山英では9月 下旬の秋摘み茶までとなります。収穫時期が終わると茶畑では翌年の新茶 に向けて茶樹の剪定や土作りが始まります。その特徴的なものが茶草場農法です。

〈茶草場〉とは茶園に敷く草を刈り取る草刈場のことで、人の手によって維持管理されている半自然草地です。茶草場農法は茶畑の周辺にあるこの〈茶草場〉からススキやササなどを刈り取り乾燥させ、茶畑の畝間に敷く伝統農法のことです。畝間に草を敷くことで、寒さから根を守る保温効果、土壌の水分を保つ保水効果、雑草を生えにくくする除草効果、土壌や肥料の流失を防ぐ効果、草が分解されて有機堆肥となり土壌を改善する効果などが生まれ、お茶の味や香りがよくなると言われています。草を刈り、草を敷く、という手間ひまをかけておいしいお茶をつくる伝統的な茶草場農法は、また里山の草地の環境をも守ってきました。

世界農業遺産に認定された「静岡の茶草場農法」

かつては刈り取った草を肥料にする、家畜の餌にする、かやぶき屋根の材料にするなどの営みが日本各地で行われていました。しかし生活の近代化や生産方法の変化などから、草を刈り取る〈草場〉は著しく減少し、草地を生息地とする動植物の多くが姿を消しました。人の手が入ることで守られてきた美しい生態系のバランスが失われてしまったからです。

しかし、静岡県の掛川市、菊川市、島田市、牧之原市、川根本町の5市 町では伝統的に茶草場農法が継続されてきたことで、〈草場〉と生態系が守られてきました。茶葉の栽培という農業活動と、生物の多様性が両立して確保・維持されていることは、世界的に見ても非常に珍しく貴重なことであり、このことが評価され、2013年5月に国連食糧農業機関(FAO)より「静岡の茶草場農法」として世界農業遺産に認定されました。

茶草場に見られる動植物たち

〈茶草場〉にはこの地域だけに生息する羽のないバッタ「カケガワフキバッタ」や、絶滅危惧種の「サシバ(タカ科)」など多くの生き物がいます。

また〈茶草場〉は、秋の七草「萩の花(ハギ)」「尾花(ススキ)」「葛花(クズ)」「なでしこの花(カワラナデシコ)」「女朗花(オミナエシ)」「藤袴(フジバカマ)」「朝豹の花(キキョウ)」が野生状態で揃って見られる貴重な場所でもあります。そのほかにも、絶滅が心配されている「ササユリ」や、「リンドウ」「オカトラノオ」「ツリガネニンジン」「ハルリンドウ」「ワレモコウ」など多くの草花が生息し、豊かな生態系をつくりあげています。

注) 世界農業遺産
世界農業遺産は、正式名称を「世界重要農業遺産システム(Globally Important Agricultural Heritage Systems:GIAHS)といい、世界の農林水産業の振興を司るFAO(国際連合食糧農業機関、本部:イタリア・ローマ)が認定し、農業のシステムを評価するものである。『社会や環境に適応しながら何世紀にもわたり発達し、形づくられてきた農業上の土地利用、伝統的な農業とそれに関わって育まれた文化・景観・生物多様性に富んだ、世界的に重要な地域を次世代へ継承すること』を目的として、2002年(平成14年)に創設された。

※ 掛川観光協会:世界農業遺産「静岡の茶草場農法」より http://kakegawa-kankou.com/chagusaba/index.html

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